15-2. RNA工学とRNAi
https://gyazo.com/c46126ed3d416a19ff66aa9dd02da825
https://amzn.to/2I6DMZu
1) RNA工学とその利点
RNA工学
RNAのもつ物質結合性、酵素活性、翻訳制御能などを直に利用する技術
RNAを働かせる方法
RNAを直接細胞に導入する方法
いったん相当するDNAをゲノムに組込ませ、そこから転写させて安定的に発現させる方法
低分子あるいは小分子RNAはタンパク質よりも容易に化学合成でき、化学修飾させて分解されにくいようにすることもできる
リボースを、窒素を含むモルホリンに変えたオリゴヌクレオチドであるモルホリノオリゴ
RNAはタンパク質より抗原性(アレルギー源となるなど)が低く細胞に取り込まれやすいため、医療分野への応用が期待されている
2) RNAによる遺伝子機能の抑制
RNAで遺伝子発現を抑えるRNA工学的手法はさまざま
https://gyazo.com/d0fbddc1202245c7db2eaa8dcd6e91aa
RNAサイレンシング
RNAがヘテロクロマチン化に関与したりRNA分解や翻訳抑制を介して遺伝子発現を抑制する現象全般
アンチセンスRNAを用いる
アンチセンスRNA
遺伝情報をもつRNAに相補的な配列をもつ一本鎖RNA
内在性RNAを人為的に抑制する目的使用する
一本鎖RNAは不安定なため、化学修飾して安定化させて使用することが多いが、効果は次に述べるsiRNAに比べると弱い
siRNAを用いる
RNAの一部の配列をもつ小分子二本鎖RNAであるsiRNA(small interfering RNA)が目的RNAを分解するRNA干渉(RNAi)という現象を利用する
強い遺伝子抑制効果を示す
miRNAを用いる
ゲノムには複数のmiRNA(マイクロRNA)をコードする遺伝子があり、生理的に類似塩基配列をもつ遺伝子発現をRNAiと類似の方法で抑制している
発生やがん化にもかかわる
3) 遺伝子ノックダウン法
遺伝子ノックダウンとは
siRNAによるRNAi活性によって特定遺伝子の機能を抑える技術
目的RNAが分解されるために翻訳が起こらず、タンパク質もできない
約20塩基長のsiRNAを細胞に導入するだけの簡単な操作で遺伝子機能を抑えることができる
ただ遺伝子ノックアウトのように遺伝子機能を完全にゼロにすることはできず、また細胞に導入したRNAはやがて分解されるため効果は消えてしまう
RNAを導入してから数日以内であれば、この方法で十分に遺伝子機能を解析することができる
現在では遺伝子抑制の標準法
memo: shRNA(ショートヘアピンRNA)
ヘアピン構造をとって二本鎖になる短いRNA
細胞内でsiRNAに変換される
shRNAの鋳型となるDNAをゲノムに組込み、安定的に発現させる
siRNAを細胞内で恒常的に働かせてその効果を見るといった実験で用いられる
RNAiの原理
二本鎖RNA分解活性をもつダイサー(dicer)などが結合して短いRNAを含む複合体ができ、これにAGO2などの因子が結合すると一本鎖RNAが残る
これがRISC(RNA-induced silencing complex)といわれるRNase活性をもつ複合体に取り込まれた後に標的RNAに結合し、標的が分解される
https://gyazo.com/61e72f1dc65f5c9af7a3e5ccd4ad918d
4) RNAの結合性の利用
RNAが他の分子と結合するアプタマー活性を利用して、細胞内で特定分子の機能を抑制しようという試みがあり、一部は実用化されている
ウイルスタンパク質やがん関連タンパク質を標的としたアプタマーRNAを細胞に導入し、標的を不活化させて治療につなげるなど、医療応用への取り組みも行われている
このようにして生体で使用する場合、アプタマーはRNA抗体として作用する
5) RNAの触媒能の利用
RNA切断能をもつリボザイム(e.g. ハンマーヘッド型リボザイム)は、特異的配列を認識してRNAを切断する制限エンドヌクレアーゼ活性部分と、標的RNAとアニールする部分からなり、アニール部分の配列をデザインすることにより特定のRNAを切断することができる
https://gyazo.com/aa0ba8b5b9e2f86bf2b188c02d3452a0
RNAウイルスの増殖抑制などに応用できる